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W034『成羽町美術館』


□所在地:岡山県川上郡成羽町下原1068-3
□設計:安藤忠雄/安藤忠雄建築研究所
□用途:美術館
□竣工年:1994年

オノケンノート ≫ B007『TADAOANDOGA DOCUMENT EXTRA 01』

ちなみに、この作品集で好きだったのは、成羽美術館で、アプローチの構成にくらくら来た。

と書いているように、この建築は僕が初めて買った作品集で、初めてくらくら来た作品だと思います。

実際に見れる機会はないかも、と思っていたのですが、今回頑張って行ってきました。

人と自然との間の橋渡し

学生のころは作品集を見ながら、単純な操作で迷路のような複雑さを生み出している構成の巧みさにくらくら来てたのですが、実際訪れてみるとその巧みさが人と自然との橋渡しになっているように感じました。

構成があまり単純すぎても対比が強すぎて自然との間に距離が生まれる気がしますし、複雑すぎると関係がぼやけてしまうように思いますが、ここでは歩きながら体験するそれぞれが印象的なシーンの移り変わりが空や緑、水、鳥のさえずりといった自然との関係性をうまく強調させてくれているように思います。

それはこの建物のスケールにもいえることで、重量感のあるコンクリートの壁が、人と自然をうまく橋渡ししてくれているようなちょうど良いスケールで、これより大きいと少し嫌味だし、小さいと生活感がでてしまうのではないでしょうか。

安藤忠雄のコンクリートの良さが一番よくあらわれたスケールの作品のように思います。

▽憧れのアプローチを折り返したところ。期待しすぎてというより、想像し過ぎていたのでさすがに意外性がなかったです。
よく知らないまま経験した方がよかったかも。

▽Z状の通路部分の右側がそのアプローチです。
プランを見ても分かりにくいけれども、一つの壁がいくつもの見え方やいくつもの効果を生み出しているのがさすがで、へぇ~っと思います。


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B007 『TADAO ANDO  GA DOCUMENT EXTRA 01』

book7.jpg二川幸夫/インタビュー(A.D.A EDITA Tokyo)1995.07
学生のころにおそらく僕が始めて買った作品集です。
建築を意識し始めたころに、安藤忠雄とコルビュジェにはまったのだが、これは当時の関西の学生の通過儀礼とでも言えるようなものだったと思う。
――閉鎖的な大学だったので、当時のほかの大学のことは実は知らないが――

当時は、世界を旅したエピソードや、元プロボクサーで、独学で建築を学ぶという遍歴に、そして建築に対する実直さに素直に魅かれたものである。
冒頭のインタビューを読み、何度初心に戻れたかわからない。

しかし、建築を学び始めてしばらくすると、その実直さが急に照れくさく感じてしまい「安藤忠雄」に興味のないふりをはじめ他の興味の対象を必死に探し始めるのである。

「安藤忠雄」的なものをとりあえず脇において、他の可能性をいろいろ考えたりもしたが、そういう見栄をはるのをそろそろ辞めて、いいものはいいと思っていいのでは、と考えるようになったのは割合最近のことである。

「安藤」的な姿勢、実直にモダニズムを突き詰める姿勢から生まれる、バカ正直にみえる安藤忠雄の建築は、類まれな「強度」を持ち、建築物としての存在意義を確保しているように思う。
方法はどうであれ、それこそが大切なのではないか?
『負ける建築』を書いた隈研吾でさえ「強度」を口にする。宮台真司もしかり。

「強度」という概念はドゥルーズからの言葉だろうが、実は僕はよく理解していない。
しかし、なんとなく今でもキーとなりうる概念の匂いがする。
今後の興味の対象である。

ちなみに、この作品集で好きだったのは、成羽美術館で、アプローチの構成にくらくら来た。