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 二-七 スケール―橋渡しとずれ

スケールの橋渡し

生物の進化、人間の社会や歴史、科学的技術の利用等を考えると、体験可能な空間的スケール・時間的スケールの幅はミクロからマクロまで限りなく幅広い。しかし、日常的に体験する空間的スケール・時間的スケールは行動単位で考えればせいぜい日~秒、キロメートル~ミリメートルの範囲であるし、その幅は限定的なものになりがちである。多くの人はかなり限定的なスケールに出会うだけで一日が過ぎてしまうことが多いのではないだろうか。

毎日の自分の生活のスケールだけに浸かっていると、それが世界のすべてだと錯覚してしまいそうになる。そんな時、大きな空のスケールに触れると、自分のスケール感をリセットできる。時には空のようなスケール、時には小さな花のようなスケールに触れるのは大切なことだろう。

例えば、建築の中に日常的なスケールとは異なるスケールと出会えるようなきっかけがあるとしたら、建築は日常のスケールとミクロやマクロなスケールとの橋渡し役となれるかもしれない。

スケールのズレ

また、建築の中に日常的なスケールとは微妙にずれたスケールがあるとすると、そのスケールとの出会いは何らかの意味をまとうように思う。空間的なスケールでも時間的なスケールでも良いと思うが、先に書いたようなその場の流れに相応しいスケールとは微妙にずれたスケール、たとえば建築の中に都市的なスケールが紛れ込んでいたとすると、建築の中に都市が流れ込むような場の流れが生まれるかもしれない。

そういったさまざまな空間的・時間的なスケールの混合した状態は、その場での出会いを活性化するだろうし、それは出会い、すなわち意味や価値が多様にある、という意味で望ましいことのように思う。

人は建築で、さまざまな空間的・時間的スケールと出会う。