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B113 『天才をプロデュース?』

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書評/ルポルタージュ


「本がすき!」より。
オフィス北野の社長であり、長年、北野武(ビートたけし)と歩いてきた著者によるプロデュース論。いわゆるHOWTO本というよりは著者自身の体験をもとに仕事に関する考えを書いたもので、それをどう読んで生かすかは読者次第といった内容。

僕が中学生のころだったと思うが、たしか1代目そのまんま東が「たけしさんはどんなに酔っ払った時でも、周りのみんなが寝てしまった後、毎日欠かさず一人で机に向かって勉強をしていた。それを見てこの人は本当にすごい人だ。かなわないと思った。」というような話をしているのを聞いたことがある。
この本でも同じようなエピソードが紹介されていて思い出したのだが、この話は結構僕の心に残り続けていて、何かをなそうとしたとき苦労とかそういうことじゃなくて、当たり前のこととしての努力があるということを知ったのはそのときだし、漠然と”プロフェッショナル”という言葉に憧れを持つようになったのは今思えばこの話がきっかけだったのかもしれない。
それ以降、僕の中では今で言うとビートたけしよりも北野武という見方が強くなった気がする。

そんな北野武の近くでプロとしての姿勢を学んだ著者の話は示唆に富むものばかりだが、大切なのはつまるところ自分自身をプロデュースできるか、という点に尽きるのではないだろうか。

「天才とは99%の努力が問題ではなく、1%の才能のことを言うのだ」というたけしさんの言葉と同じで、やれば出来る、なんていう嘘をついちゃいけません。-中略ー本当にやっている人は、やれば出来るなんて思っていません。やっても出来ないことがこれだけあるということを知った上で、限られた時間の中で自分がやるべきこととは何かを知っています。それが客観性というものであり、それを分かっている人が天才と呼ばれるのでしょう。(あとがきにかえて~「やればできる」の嘘より)

北野武にしてもイチローにしても天才と呼ばれる人はプロに徹し、やるべきことを淡々とやる。自らをプロデュースする能力が人並みはずれているのだ。ナカタにしても自分の人生をプロデュースすることに徹し、あれほど才能に恵まれたサッカーを一つの手段でしかないと捉えられるのがすごい。

プロフェッショナルでありたい。そう思える良著でした。
(当然、北野武の最新作のプロモーションも兼ねてのこのタイミング、というのがしたたか。著者の狙い通り観たくなりました。)