家づくりは生活の優先順位を決めていくこと(設計事務所に頼むと高くつくの?)

予算に合わせて考えるということ

「設計事務所に頼むと高くつくのでは。」という疑問を耳にすることがよくあります。
これに対しては、全く違うとも言えますし、その通り、とも言えます。

どういうことかと言うと、メーカーなどの商品住宅は、ある程度決まった仕様・グレードの中から予算にあったものを選ぶことになりますが、多くの設計事務所の場合では、特にこうしなければいけない、という縛りはありません。全てにおいて、限りないあらゆる選択肢の中から、予算に合わせた組み合わせを考えていく、という作業を積み重ねていくことになります。

ただ、初めて経験する家づくりで、無限とも思える組み合わせを決めていける方はほとんどいないと思います。
そこで、設計事務所がプロの視点と経験から先導しつつ、お客さんと一緒に組み合わせを考えていくことになります。(最近はお客さんも様々な情報を手軽に集めることができるようになったので、逆にそれまでなかった選択肢を教えていただくこともあります。)

とにかく安くすることだけを目的に組み合わせていけば、当然安く抑えることが出来ますし、逆に、どれもこれも高価なもので組み合わせていけば当然高くつきます。
設計事務所を訪ねてこられる方は何かしらこだわりのある方が多いので、結果として高くなる傾向があり、それが、「設計事務所に頼むと高くつく」というイメージに繋がっていることはあるかも知れませんが、基本的な姿勢としては、お客さんの予算に合わせて要望を叶えるための最適解を見つけていく、ということが設計という行為だと思っています。

家づくりは生活の優先順位を決めていくこと


いつもお客さんには、家づくりは、生活の中で自分が大切にしたいものは何か、を探しながらそれらの優先順位を見つけ決断していく作業だと説明しています。

限られた予算の中であらゆることを満たすことはできないので、必ずなにかしら優先順位を付けなければいけないのですが、それを楽しく、メリハリをつけてできれば家づくりの8割はうまくいったようなものです。

潤沢な予算があれば別ですが、ここで、優先順位を付けられず、全て同等に扱ってしまうと、予算内に抑えるためには結局はすべてにおいて求めている基準に満たない、といった魅力に乏しいものになってしまいます。

よく、動物園で人気の動物など自然界の形態を例に出すのですが、象やキリン、サイやカバ、どれも何か一つを突出させた特徴的な形をしています。それが多くの人に人気があるのは、そういう割り切りのようなものに生きていく力・躍動感のようなものを感じるからではないのかな、と思っているのですが、住宅も同様に、優先順位にメリハリを感じられるものは愛着の持てる魅力的なものになっているように思います。

割り切りが必須になりつつあること

職人不足や建築資材価格の上昇などにより建設費用はじわりとじわりと上がり続けています。また、決して悪いことではないですが、構造や断熱などもそれなりの性能にすることが普通になりつつあるので、基本性能を満たすための必要コストは以前にまして大きくなっています。
加えて消費税の増税などもあり、10年前にはできたことが今同じ価格ではなかなか実現しづらくなっています。

さらに、平均年収も下がりつつあることを考えると、10年前よりも、優先順位を明確につけてメリハリのある予算配分を考えることの必要性が大きくなってきていると思います。

事務所としては、比較的高年収のクライアントに絞り込めばそれほど問題にならないのかも知れませんが、やはり、いろいろな人に家づくりの楽しみを知ってもらいたいという気持ちを捨てることは難しいです。(ローコストばかりでは事務所の経営的には厳しくなるのですが・・・)

家づくりのコストには、構造や断熱などの基本性能、設備や仕上げ等のグレード、大きさや建物形状、その他様々な要素が絡んできます。その中で、例えば、断熱等の基本性能を満たすことを優先させるために、必要な部屋や面積、時には間取りの常識を問い直して、思いっきって小さな家にしてしまう、というような割り切りが必要になることは増えてくるように思います。
その時に、一見ネガティブな決断をその家の魅力へと転換するために、設計事務所の持ついろいろな引き出し・アイデアが必要になってくるのです。(と、同時に施主自信がそれを楽しむようなメンタリティも必要です。)

例:HTGH ~UA0182C027の家


実績ページ:HTGH ~UA0182C027の家
この家は当初、2階建てで計画していたのですが、ある日、お客さんから、高断熱・高気密の仕様(鹿児島ではなかなかないようなハイグレードな仕様)に変えたい、という連絡がありました。その際、今まで考えていた2階部分はそっくり取りやめにして1階部分の面積で構わない、と言われたのですが、とてもびっくりしました。

普通は、それまで見てきた計画案に未練が残り、何かを大きく減らす、という決断はなかなか出来ず、いろいろなところを少しづつ削っていくという選択になりがちです。
それはそれでやりようがあるかも知れませんが(現実的に無理なケースもありますが・・・)、このお客さんは、快適な熱環境を実現したい、ということの優先順位をはっきりと前に打ち出したため、それを実現できただけでなく他の部分に関しても無理のない予算を割くことが出来ました。

経験的には、コスト調整の過程でお客さんが様々な選択をしていくことになりますが、出来上がったものを見ると決して妥協の産物ではなく、はじめからその様に計画していたかのように思えることがほとんどです。コスト調整は、丁度よい塩梅を見えつけるための作業とも言えます。

土地と建物のバランスについて

また、土地から購入される場合、土地と建物の予算バランスも重要な要素になってきます。
土地と建物の総予算が3000万円で考えているのに、土地に2000万円かけてしまえば、建物にかけられる予算はかなり厳しいものになってしまいます。(実際、土地を購入後に相談に来られた方で、これに近いバランスのケースも少なくはないです。)

叶えたい生活によっても、土地と建物の予算バランスは変わってきますし、一見不利な条件の安い土地が建築的な工夫で魅力に変えられることもあるかも知れません。
可能であれば、土地を探している段階で相談に来られることをおすすめします。

例:MKGT ~南郡元の家


実績ページ:MKGT ~南郡元の家
この家のお客さんが相談に来られたとき、2つの敷地で迷われていました。
一つは14.3坪の土地で、もう一つは18坪の土地。後者の方の土地はいろいろな条件から前者の2倍以上の金額でした。(建ぺい率/容積率は60/200と60/160)
お客さんとしては前者のエリアのほうが馴染みがあるけれども、さすがに14.3坪は難しいだろうし、環境としては後者のほうが良いように思う、ということで悩まれていました。

総予算をお聞きして、試算してみたところ、後者では建物にかけられる金額がかなり厳しく、思い描くようなものを実現することは難しいように思われました。
そこで、なんとか建物の方を工夫すれば良いものにできると思うので、予算の上限を上げることが難しいのであれば、こちらを選んだ方が良いのでは、と小さい方の土地を推薦したところ、それを信じて頂いて、そちらで進めることになりました。

スキップフロアーを採用し、床下収納やロフトを組み合わせることで、妥協的ではないプランをまとめることができたのですが、結果的には、仕様的にもほとんど妥協せずに進めることが出来ました。お客さんにも満足して頂けたと思います。

そもそもの予算について

ところで、ここまで、家造りの総予算と言う言葉が何度もでてきていますが、そもそもの予算はどうやって決まっているのでしょうか。
今までは、総予算はお客さんの方で決めて頂いて、それをもとに計画をしてきましたが、本来であれば、将来のライフプランとファイナンスプランによる具体的な数字を算出し、それをもとに決定した方が、より適切な金額を採用できますし、何よりお客さん自信の不安が取り除かれより前向きに家づくりに取り組めるはずです。

その部分は、今までなかなかアプローチできなかった部分ですが、お金に関する諸々に対しても責任を持って提案・サポートできるような体制を近いうちに準備したいと思っています。

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