色彩の世界へ踏み出そう B226『色彩の手帳 建築・都市の色を考える100のヒント』(加藤 幸枝)

加藤 幸枝 (著)
学芸出版社 (2019/9/15)

『色彩の手帳』は「色が苦手」「色は難しい」「色は結局好き嫌いだから」「自分には色選びのセンスがない」と一度でも感じたり、考えたことのある”全ての”人のために制作したものです。(p.1)

この本の基になった『色彩の手帳・50のヒント』が3年ほど前にtwitterのTLで評判が良くて、ずっと気になってたのだけど、遅ればせながらバージョンアップ?した本書を購入しました。

内容が具体的で納得する部分が多かったので紹介的な文章になってしまいますが、簡単に感想を書いておきたいと思います。

多くの人に手にとってもらいたい一冊

色に関する本は数冊持っているのですが、建築の分野でここまで実用的な本は自分の知っている中では初めてで、かなりおすすめの一冊です。

間違いなく多くの人に手にとってもらいたい一冊なのですが、

仕事をともにする方々の「何を根拠に色を選べば・決めれば良いのか」というあまりにも多くの問いに対し、自身が何か決めて終わりではなく「色選びの手がかり」や「色の選び方のヒント」をお伝えし、その成果や効果を共有する方が、もしかすると「色彩計画家」としての機能はもっと広く、そして永く活かされるのではないかと考えるようになったのです(p.1)

というように、多くの人が色に対してどう向き合ってよいか分からない(故に、無根拠に個人的な思いつきで色が決められていく)という現実がこの本が書かれることになった背景にあるようです。
そのことを考えると、個人や公共を問わず発注者となる立場の方、もしくはまちづくり等に関わる方に、より多く読んでもらいたいと思いました。
色に対する向き合い方をまずは知ることで、変えられることがたくさんあるように思います。

色彩を計画する

内容も色彩に関する基本的な理論から、具体的な事例や色彩計画へのアプローチの方法、著者自信の色彩または建築や都市に対する考え方と経験を基にした思想的な部分、その思考プロセスなど、およそ建築の色彩に興味を持った人が知りたいと思うようなことがすべて、と思えるくらいばっちり描かれています。
最初に目次に目を通すだけで早く読み進めたいとワクワクしましたし、著者自身が、色彩に関して誠実に、そして秩序立てて考えているのが伺えました。

世の中、何もかもが秩序を保つ必要はありませんが、こと色においては、何らかのルールに基づくものは心地よく感じやすい、という性質があることに、私自身は信頼を置いています。
この秩序はある程度までは理詰めで導き出すことが出来ますから、色彩的な調和の感じられる配色を考えるのにセンス云々ということはあまり関係ないのでは、と思っています。(90 集めた色を並び替える p.207)

色彩計画の流れとは、色を選ぶ・決めるためのシステム設計だと考えています。(94 色彩計画の流れ p.217)

本書のヒントから、あるいはいくつかのヒントを組み合わせてぜひ「色彩を計画」してみて下さい。(100 色彩を計画する p.229)

これらの言葉には「色彩を計画」することに対する信頼が感じられますし、「色彩計画の流れとは~」の一文は「建築計画の流れとは~」と置き換えてイメージすると、その信頼の強さとより良く選びたいという誠実さが伝わります。
(この辺になんとなく建築家に似たような性分を感じますが、本文に時々出てくる、おそらく抽象化を計りたいのであろう建築家の一言vs著者の一言も、どちらも分かるだけに興味深いです。)

色彩の世界へ踏み出そう

自分自身、今まで無難な色使いをすることが多かったですが、もっと色を使えるようになりたい、感覚的にも使えるようになりたいし、なおかつ根拠を持って使えるようになりたい、という気持ちはだんだんと大きくなりつつあります。

なので、まずはこの本と色見本帳を片手にもっと色彩の世界へ踏み込んでいければと思います。

その際、ごく当たり前のことかもしれませんが、

最終的には個々の色を選ぶというよりも「それぞれの色(・素材)が組み合わさった時に生み出される全体の印象や効果」を選択する、ということを意識しています。(99 単色での判断ではなく、比較して関係性を見る p.227)

という部分のイメージ、どのようなものを目指すのかをより確かなものにしていくことが重要なんだろうなと思います。

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