B082 『元気が育つ家づくり―建築家×探訪家×住み手』

仙田 満、渡辺 篤史 他 (2005/02)
岩波書店


建築についていろいろな議論があるけれども根本にはこういう思いがあるはずだ(と願いたい)。

ことさらに元気にならなくてもいいとは思うけれども、われわれには後世に受け継いでいく環境を創る(守る)義務がある。
しかし日本では自分のことばかりを考えていて、環境に対する意識が不足しているように思う。
というか、「自分さえよければ」という考えはますます加速していきそうな気がする。

文化は、そこに住む人の以上でも以下でもないと言われますが、あの時よくぞ創ってくれたこの環境、と後世の人々に言わせてみたいですね。・・・・それには、私たち庶民が、きっかけはどうあれ、建造物や街並み、環境に興味をいだき、やがて「見巧者」になることです。(渡辺篤志)

多くの人は身の周りの物や建物、道路・景観といった環境が生活を破壊することもあれば人間をつくることもあるということを考えたこともないのではないだろうか。
せめて義務教育の間にでも、自分たちがどのような環境をつくっていくのか、その環境がどのように人の幸福や豊かさに関っているのか、という見方があることぐらいは伝えて欲しいと思う。
「経済」という軸以外にも同じように扱うべきさまざまな軸がある、というのがあたり前と感じられるようになって欲しいものです(そんなことを言うのは「負け組」だとか言われるのでしょうが)

仙田満は日本建築家協会会長であり、「子どもを元気にする環境づくり戦略・政策検討委員会」の委員長もしている。
ただ、「子供を元気にする」と言うのは多少違和感がある。子供なんてほっといたって無駄に元気なものだし、現代であってもそれは変わらないだろう。それを大人がさまざまな機会を奪うことによって元気でなくしている(又は大人がそう思い込んでいるだけ)ではないだろうか。
それを「子供を元気にする」というのは元気にしてやると言う大人のエゴのようなものを感じて違和感がある。NHKの「ようこそ先輩」を見ていてもゲストの先生が常識のタガを少し外してやるだけで子供たちがみるみる元の元気さを取り戻すというのはよくある光景だ。
そういえば元気は「元の気」と書く。なるほど。

渡辺篤志は建物探訪で800件以上見ているそうだけれども、それ以上にすごく勉強している。
建築が好きなのが分かるし、それゆえに現実の問題がクリアにみえて悔しいのだろうな。思いはすごく伝わってきた。建築をやっている人にもだけれども、一般の人にこそ読んでみてもらいたい。
建築を見る目を変えるきっかけとして。

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